意識調査から広告効果を読み解く方法|態度変容をリフト値で評価する

意識調査から広告効果を読み解く方法|態度変容をリフト値で評価する マーケ×データ分析

序章|「この広告、効果あったんですか?」にどう答える?

広告出稿後、よく聞かれる質問があります。

「で、結局この広告って効果あったんですか?」

クリック率やCV数があれば答えやすいのですが、ブランディング目的の広告の場合はそうもいきません。
態度変容——つまり、認知や好意、理解や検討といった“気持ちの変化”をどう可視化するか?
ここが測れないと、投資判断もPDCAも曖昧なままになります。

今回ご紹介するのは、実際に僕が広告代理店の実務で行った
「意識調査から広告効果(態度変容)を読み解くための評価方法」です。

背景|出稿後に広告接触者・非接触者で何が変わったかを見たかった

あるクライアントの案件で、TV・YouTube・Instagram・リスティングなど複数の広告を出稿しました。
出稿の目的は「ブランディング」——つまり、すぐに売上には直結しないフェーズ。

そこで必要だったのが、“広告に触れたことで人々の気持ちは変わったのか?”を明らかにすること。

特に重要だったのが、

  • 広告以外の影響(例:季節要因、SNSバズなど)を排除したい
  • 媒体別に「効果の大きさ」を測りたい
  • 社内・クライアントに納得感を持って提案したい

というニーズでした。

調査設計|広告「非認知」者も加えて“純粋な非接触者”をつくる

広告効果を見ようと思ったとき、まず比較すべきは「広告接触者 vs 非接触者」です。
ただし実務では、“完全な非接触者”を定義するのがとても難しい。

特に以下の課題がありました:

  • TVやYouTubeのような広範囲な出稿では、「のみ接触者」を特定するのが難しい
  • 少額出稿の媒体ほど、非接触サンプルが集まりにくい(=母数問題)

そこで工夫したのが、「非認知者」も非接触者としてカウントすること。
つまり、

非接触者 = 調査時点で広告接触しておらず、かつ広告認知もしていない人

という形で定義を調整しました。これにより、より純度の高い比較対象を確保することができました。

分析方法|リフト値で「どれだけ変わったか?」を可視化

比較にはリフト値(Lift)を使いました。

リフト = 接触者のスコア ÷ 非接触者のスコア

例えば、「企業好意率」が

  • 非接触者:5%
  • 接触者:10%

だった場合、リフトは 2.0倍 となります。

広告接触非接触によるリフト値

イメージはこんな感じ!

このリフト値を、各態度指標(認知・好意・理解・検討・意向など)で算出することで、

  • どの媒体が
  • どの態度指標に
  • どれだけ効いたのか?

が一目で分かるようになります。

実際に各媒体、接触パターンごとに検証するとこのような結果になりました!

※補足①:網掛け棒グラフはサンプル数が少なく参考値のため、誤差範囲も合わせて記載。
※補足:この分析はExcelでもできます

分析結果の活用|「どの媒体が効いたか?」が見えてくる

ここのリフト分析からは、たとえば以下のような判断ができました:

  • TV広告は企業認知や好意に効く(リフト値:1.02〜1.06)
  • YouTubeは企業認知・好意への寄与が大きい(リフト値:1.04〜1.09)
  • リスティング広告は態度変容よりも刈り取り要素が強いため、リフトは限定的

この結果をもとに、次のような施策につなげました:

  • 出稿媒体の「目的別役割分担」の見直し
  • 媒体の費用対効果をリフト ÷ 出稿費用で計算して相対評価
  • 次回出稿時の“予算配分案”の設計材料として活用

※ただし「媒体別リーチ効率(出稿金額×リーチ率)」との掛け合わせも必要であり、本記事だけで最適アロケーションが完結するわけではありません。

実務で感じたリアル|これからやる人へのアドバイス

実務でこの分析をやってみて強く感じたのは、

「広告って本当に効いたの?」という問いに、
“なんとなく”ではなく“数字”で答えられる安心感があること。

以下、これから取り組む方へのリアルなアドバイスです:

  • 完全な接触/非接触は定義しきれなくても、「広告非認知」条件を加えると精度が上がる
  • リフト値は感覚値で語られがちなブランディング効果を、ロジカルに説明できる
  • 広告の価値を“クリック”ではなく“態度変容”で語れるようになると、提案の説得力が変わる
編集長
編集長

今回ご紹介したのは、あくまで広告接触・非接触者を意識調査にて聴取する方法。
誤認者を除外し、より精度を上げたい場合はGoogleなどの各プラットフォーマーが提供するデータクリーンルーム(DCR)と意識調査データを掛け合わせて分析する手法もありますが、そもそもDCR自体が解放されている企業は大手広告代理店などの一部企業のみとなります。
誰もが実践できる手法ではない点ご注意ください。

まとめ|広告接触による変化は「リフト」で読み解ける

本記事では、広告出稿の効果を意識調査をもとにリフト値で可視化する方法をご紹介しました。

評価手法活用のポイント
広告接触者 vs 非接触者で比較「態度変化の大きさ」を測る
非認知者を含む非接触定義母数確保と純度向上
リフト値(接触/非接触の割合)媒体別の効果を可視化する軸

この分析だけで予算配分を決めるのは難しいですが、
「この広告、効いてたの?」に自信を持って答えるための武器にはなります。

▶ 関連記事:

📎広告出稿金額に応じた各媒体リーチ率を予測する方法|参考データ付き

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